そんなには褒めないよ。映画評

ミニシアター系映画レビュー*沈黙する言葉

映画タイトルの50音順メニュー作りました!

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(ほぼネタバレ)恋に悩む男女におすすめ、大人になるために。

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映画「ザ・ダンサー」主役のソーコ Soko がいいです。で、リリー=ローズ・デップはどうでしょう?

バレエやコンテンポラリー・ダンスについては多少の知識はありますが、ロイ・フラーさんという方は知りませんでした。

公式サイトに「モダン・ダンスの祖」というコピーが使われており、え? イサドラ・ダンカンじゃないの? と、やや疑問を感じたんですが、映画の中にはしっかりとイサドラ・ダンカンが出てきました。

それも、イサドラを演じているのがリリー=ローズ・デップさんという鳴り物入り的なキャスティングでした。

 

監督:ステファニー・ディ・ジュースト

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19世紀末ベル・エポック。世界にひとつのダンスで、熱狂を巻き起こしたダンサーがいた。彼女の名は、ロイ・フラー。自ら色や角度を設計した光の照明の中で、シルクの衣装が様々な形を織りなす、誰もが初めて目にするダンスだった。“モダン・ダンスの祖″と呼ばれ、パフォーマーとしての天才的なセンスが今再び評価されている。(公式サイト

 

まず、映画とは別にダンスの話で言えば、これはモダン・ダンスではないですし、ロイ・フラーさんというのはダンサーというよりも視覚的な演出に優れたパフォーマーですね。

 

スカート・ダンス、サーペンタイン・ダンスという言葉があるようで、ふっと浮かぶのはカンカンなんですが、あんな感じで長いスカートを流れるように揺らして布の美しい流れを見せるようなダンスのようで、1890年代に舞台で人気を博していたとウィキペディアにはあります。

 

ロイ・フラーさんの実写映像が残っています。

File:Loie Fuller (1901).ogv - Wikimedia Commons

 

当時、モダンダンスという言葉があったわけではありませんので、今の視点でどうこう言っても仕方ありませんが、映像を見る限り、やはり「モダンダンスの祖」という言葉には無理がありますね。

 

で、映画です。冒頭、true story と出ていたと思いますが、ウィキペディアを読む限りほぼ創作のように感じます。 

 

映画では、まず、場所は何処とも知れませんが、アメリカの田舎での父親との生活が描かれます。

父親はフランス人で大酒飲み、よく分からない諍いで撃ち殺されます。ルイーズ(ソーコ Soko)は、母を訪ねてニューヨーク、ブルックリンに向かいます。母親は、夫の酒のせいのようなことを言っていましたが、今は宗教団体に身を寄せています。

ブルックリンでは、俳優として端役の仕事を見つけ、その場に向かいますと、ヌード写真の撮影のような仕事で、とにもかくにもなんとかそれはこなし、このあたり理解不能なんですが、その後に、その写真家に、自分は男性経験がないから経験したいと申し出ます。

初体験も無事済ませ(?)、その後もその勢いで、自ら考案した照明効果を使ったサーペンタイン・ダンスをもって人気を博し一定程度の成功を収めます。

ところが、ルイーズ、改めロイが出演できない隙きを狙って、劇場主とひとりのパフォーマーがロイなしで興行しようとします。

ロイは、これは私のものよ!と怒り、フランスへ旅立ちます。

 

と、前半は、かなり展開を端折りまくっており、よくつかめないまま進みます。ただ、そのことに悪い印象は全くなく、ロイ・フラーを演じているソーコさんの好印象もあり、また、映像的にもアップの映像と激しく動くカメラワークでテンポよく進めており、まあ言ってみれば、ツッコミを入れる暇もない感じではあります。

 

前半から後半にかけての重要な役回りと思わしき人物として、フランス人のルイ・ドルセー伯爵(ギャスパー・ウリエル)がいます。

 

このギャスパー・ウリエルさん、「たかが世界の終わり」のルイであり、「サンローラン」のサンローラン本人を演じていた俳優さんで、そのどちらも高評価だったんですが、この退廃的な伯爵役も無茶苦茶ぴったりでした(笑)。

多分、やや危ない感じがよく似合うということですね(笑)。

 

で、この人物、どうやら没落貴族のようで、アメリカ人の富豪と結婚して、そのお金で暮らしている、いわゆる退廃的な人物として描かれており、何やら心臓にでも持病があるのか、常に嗅ぎ薬を携帯しています。

 

たまたま、ロイの舞台を見た伯爵は、フランスへの渡航の手助け(経緯は省略)をします。

多分、この伯爵自身が創作された人物でしょうし、また、この伯爵とロイとの会話がフランス語でなされるんですが、あるいは、このためにロイの父親をフランス人にしたのではないかとの疑念もわきます。もし事実はそうではなく、この展開のために父親までフランス人にしてしまったとするなら、これはいくらなんでも true story をうたってはいけないでしょう。

 

その意味では、後半も相当創られまくっています。

 

いきなりフランスの劇場(フォリー・ベルジェール?)の支配人の前でイレギュラーにアピールし、出演機会を得ます。その時、手助けをするのが、ガブリエル(メラニー・ティエリー)というその劇場のマネージャーのような、よく分からない人物で、その後、一貫してロイをサポートし続けます。

 

で、後半のパリ編に入るのですが、前半はよく分からないながらもそのテンポと荒々しい編集とロイの感動的な舞台で結構見られたものの、さすがに後半はまとまりを欠いてしまっています。

 

その一番の原因は、ロイの舞台のコール・ド的なダンサーとして登場するイサドラ・ダンカン(リリー=ローズ・デップ)の扱いを間違えていることです。

 

つまり、ビッグネームゆえに特別扱いしすぎです。

 

イサドラの登場に一人だけ他のダンサーとは違う衣装を着せてみたり、このあたりもよく分からないのですが、オペラ座のホワイエかバーでイサドラを踊らせてみたり、ロイとイサドラの間にレズビアン的シーンを入れたり、はっきりいってもうぐちゃぐちゃです。

 

それが監督の意志なのか、プロデューサーサイドの興行的か、あるいは契約上の結果なのかは分かりませんが、あれはやりすぎでしょう。

 

結局、映画は、イサドラは離れていきますが、オペラ座での舞台も成功して終わるということになります。

 

リリー=ローズ・デップさんその人に、もちろん全く知りませんので、どうこうはありませんが、率直に言って、映画をぶち壊しています。

 

もし、あの扱いをするのなら、主役としてキャスティングするべきです。

 

本人にしてみてもよくないでしょう。バネッサ・パラディのファンとしては注目したいとは思いますが、あまり良い環境に置かれているとは思えませんね。

 

まあ余計なことです。

 

とにかく、映画は前半は見られますが、後半はまとまりを欠いているということで、監督、あるいはプロデューサーが映画製作をコントロールできていないのだろうと思います。

 

そうそう、ラスト、伯爵は車を運転し、自ら火を放ち自殺していました。

 

ある種、退廃的な美はあるのかとは思いますが、まあ普通は「は?」でしょう。

 

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