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そんなには褒めないよ。映画評

ミニシアター系映画レビュー*沈黙する言葉

映画タイトルの50音順メニュー作りました!

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映画「誰のせいでもない」自己中の男が自ら何も行動しないでいたら、うまくいったよ、ってか? 面白い映画です。

映画

ヴィム・ヴェンダース監督、7年ぶりの劇映画です。7年ということは「パレルモ・シューティング」以来ということになり、その間、「Pina」や「もしも建物が話せたら」のドキュメンタリーを撮っています。

この映画、公式サイトには「今作は 3D映画として撮影され、日本での上映には 2Dと 3Dがある」とあり、ということは、そもそも 2D上映は意図しておらず、2Dは日本だけということなんですかね。上映館をみましても、3Dは少ないですね。

3Dで見られない以上判断は難しいのですが、内容は大人の映画で面白いです。

 

監督:ヴィム・ヴェンダース

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真っ白な雪に包まれたカナダ、モントリオール郊外。田舎道を走る一台の車。突然、丘からソリが滑り落ちて来る。車はブレーキをきしませて止まる。悲劇は避けられたかに思えたが… … 。一つの事故が、一人の男と三人の女の人生を変えてしまう。車を運転していた作家のトマス、その恋人サラ、編集者のアン、そしてソリに乗っていた少年の母ケイト。彼らの12年にわたる物語である。(公式サイト

 

映像は、単に物語を説明するための道具ではないわけですから、作り手が観客に見てほしいと考えているもの、この映画の場合は 3D映像になりますが、それを見られない環境での上映ですと、多分映画そのものの1/3くらいしか受け止められていないのではないかと思います。

 

カメラワークや構図をみても相当 3Dを意識して撮られているように感じます。

 

冒頭、トマスと湖上の釣り人たちのシーンからして奥行きを意識したシーンですが、そうしたシーンが頻繁にでてきます。また、トマスが事故を起こし、轢いたのが兄クリストファーひとりだと勘違いし、弟を車の下に残したまま、雪の中をクリストファーを肩車しながら少年たちの家へ向かうシーン、レールかクレーンか分かりませんが、横に滑るように移動するカメラが人物と背景のズレみたいなものを捉えようとしているように思います。こうしたシーンも頻繁です。

 

個人的には、よほどの映画でなければ、あの鬱陶しいグラスをかけてまで映画を見たいとは思いませんので、2Dでみても、ああここはこれを見せたくてこうしているんだな、などと想像するのもまた楽しいと言えばそうなんですが、正直、あの「Pina」を見ていますので、この映画はその「よほど」に入り、とても残念ではあります。

 

それはともかく、これ、面白いシーンがたくさんある映画です。

 

結局、物語としては、ひとりの男と四人の男女(三人の女とひとりの子供)の関係、いや、男中心の話ですから関係とまでは言えなく、自己中(誰でもそうだという程度の意味で)の男の12年間の話だと思います(笑)。

 

トマス(ジェームズ・フランコ)とサラ(レイチェル・マクアダムス)のシーン。映画の冒頭から二人の関係はうまくいっておらず、理由のひとつは、子供を欲しい欲しくないといったことだと二人の会話で語られますが、後半でトマスは欲しいのにできなかったようなことも言っており、それがトマスの人物像の一端なのか、さほど意味は無いのか、翻訳の曖昧さなのかは分かりません。

で、数年後(だったと思う)の再会時のシーンが意味深で面白いです。トマスは妻とコンサートに来ており、訳あって集中できず、ホワイエへ出ます。偶然(でしょう)、サラと再会し、互いの近況を話し、会話の中でイラッとしたサラがトマスの頬を2,3度叩きます。その叩き方も面白いのですが、その後、自分の席に戻ったトマスのすっかり吹っ切れた様子に、思わず苦笑が漏れるほどでした。

 

トマスとケイト(シャルロット・ゲンズブール)のシーン。ケイトは下の子供を亡くしたショックから立ち直れず、それは加害者であるトマスに対する気持ちだけではなく、自分がああすればよかったこうすればよかったと思う後悔の気持ちから抜けきれないでいます。

で、2年後(だったと思う)、ケイトは、再び事故現場を訪れたトマスを家に招き入れ、自分の思いを語り、トマスはトマスで何でも力になると言って、一旦は別れますが、その夜(ではなかったかも?)、ケイトはトマスに来てほしいと電話をします。

ソファに座った二人、その後どうなるのかとドキドキ(笑)しましたが、ケイトはトマスの膝枕で眠ってしまい、トマスもそのまま眠ってしまったらしく、朝を迎えます。

言葉でどうこうとは説明できませんが、ほんと意味深で面白いシーンです。

ちょっと話はそれますが、シャルロット・ゲンズブールの出番が少ないんですよ。これ、トマスの映画ですので仕方ないのですが、もっと出番を増やしてくれれば、また違った映画になったような気がします。

 

トマスとアン(マリ=ジョゼ・クローズ)、アンは編集者で、かなり早い段階で顔を出し、トマスに好意を持っているらしき視線をおくるシーンを入れていますので、これはきっといずれそういう関係になるんだろうと思っていましたら、かなり後半ではありましたが、やはり、子供とともに一緒に暮らすことになります。

で、三人で遊園地に遊びに行った際に、観覧車か何かが落ちる事故が起き、巻き込まれはしませんでしたが、アンは精神的ショックでトマスに突っかかります。

つまり、その事故の際、トマスが冷静に救助をおこなっていた様子に対し、自分はこんなに動揺して手まで震えているのに、あなたはなぜあんなに冷静でいられたのかと詰め寄り、手を見せてと責めます。

冷静に考えれば、アンの言い分はとても奇妙なことなんですが、トマスの人物像を浮かび上がらせるとても面白いシーンです。

 

最後の一人、トマスとクリストファー(ロバート・ネイラー)、この二人の関係がタイトルになっている「Everything will be fine」(何事もうまくいくよ)の象徴のようになっています。

クリストファーは、弟の死を目の当たりにしたショックで心的障害を抱えて育ったようです。その時の記憶が、トマスに肩車された映像として記憶されて、子供の頃にはそれを絵に描いています。このクリストファーの描き方、結構有効で、リアリティがあります。 

そして、12年後、クリストファーは作家を目指す青年に育っており、しかし、決して消えない心的障害は、彼に、ある奇妙な行動を取らせます。このあたりはサスペンスタッチで描かれています。

で、ラスト、Everything will be fine. となります。悟りみたいなもんですかね(笑)。

 

結局、世の中、何もしないでじっとしていれば、最後はうまくいくよという、大人の映画としか言いようがありません。

 

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