そんなには褒めないよ。映画評

ミニシアター系映画レビュー*沈黙する言葉

映画タイトルの50音順メニュー作りました!

当サイトおすすめ映画直近の4作品

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残像

監督:アンジェイ・ワイダ

アンジェイ・ワイダ監督の遺作、心に残る映画です!

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午後8時の訪問者

監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ&リュック・ダルデンヌ

(ネタバレ)ダルデンヌ兄弟、相変わらず隙がなく完璧!

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パリ、恋人たちの影

監督:フィリップ・ガレル

(ほぼネタバレ)恋に悩む男女におすすめ、大人になるために。

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ブラインド・マッサージ

監督:ロウ・イエ

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最新記事

「スポットライト 世紀のスクープ/トム・マッカーシー監督」まるで中身のないダイジェスト版のような映画。作り手に見たいもの、知りたいものがない映画はつらい。

今年のアカデミー賞、作品賞と脚本賞受賞作品です。

そのせいだと思いますが、2,3日前の昼間に出掛けた時は、映画館の外にまで列ができていました。さすがに怯み、鑑賞をあきらめてすごすごと帰ったのでした。

で、昨日あらためて夜に見に行きました。

昼間とは全く客層が変わり、ほとんどが仕事帰りの方たちの印象でした。それに、さほど混んではおらず、ゆっくり見られました。

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2002年1月、アメリカ東部の新聞「ボストン・グローブ」の一面に全米を震撼させる記事が掲載された。地元ボストンの数十人もの神父による児童への性的虐待を、カトリック教会が組織ぐるみで隠蔽してきた衝撃のスキャンダル。この内幕を取材に当たった新聞記者の目線で克明に描いた、それが『スポットライト 世紀のスクープ』である。(公式サイト


いきなりきつい言い方で始めますが、中身のないダイジェスト版のような映画でした。

映画は、ほとんど記者たちの社内シーンや取材シーンばかりで、その取材の対象である教会や神父たちの動きが全く見えなく、教会組織そのものの犯罪を暴くと言いながら、教会のシステムなど何も浮かび上がってきません。

その当時、記事のインパクトがどの程度であったかは知りませんが、15年後の今、記者たちの取材過程をそのまま映画にして何の意味があるのでしょう。

映画的にも、中途半端な扱いの事柄が多すぎます。

ボストン・グローブ自身が起こした裁判の扱いも中途半端、失くなっている裁判記録の扱いも中途半端、何人か出てくる弁護士たちへのツッコミも中途半端、事実なのかどうか分かりませんが、ロビー(マイケル・キートン)の友人の弁護士が、自分が示談にした神父たちの名前を、やっと最後に認めることで免罪して有耶無耶にしてしまい、そもそも犯罪そのものに全く斬りこむこともなく、じゃあ記者たちの葛藤や苦悩に迫っているかといえば、それさえ全くなく、ただただこんなことがありました的に事象を並べていくだけというのは、一体なぜこの映画を撮ったのかと尋ねたくなります。

細かい描写の中途半端もいっぱいあります。

記者たちの家族関係をチラッチラッと語っておきながら何も描かず、サーシャ(レイチェル・マクアダムス)が訪ねた「ほんのいたずらだった。自分はレイプはしていない。なぜなら自分がレイプされた。」と語る神父は何だったの?と問いたくなりますし、何人か登場する被害者の証言もただ語らせるだけで終わらせています。

まあ確かに、それらを描き切れば、とても2時間で終わるわけもなく、5時間、6時間の映画になってしまうのかもしれません。

結局、この映画がダメなのはそこです。

15年前の出来事に対して、何か一点に焦点を絞るのでもなく、またその時点では見えなかった何かに視点を置くのでもなく、ただただその時あっただろう事象を語っているだけで、作り手自身が何かを見ようとしていないということです。

結局、この映画が描くべきは、皆何となく分かっているのに誰も見ようとしない、どの社会にも、どの国にもあるだろう、人間が持つ自己欺瞞的人間社会の有り様だったのだろうと思います。

ロビーに、20年前(だったかな?)持ち込まれていた告発を見過ごしてしまった、見ようとしなかった、あえて見なかった、のは自分だったと語らせて終わりにしてしまっては、15年後、映画にする意味など何もないということです。

ああ何ということでしょう!?

こんな勢いで書くつもりはなかったのですが、なぜかテンションが上ってしまいました(笑)。所詮、アカデミー賞なんて典型的なアメリカ映画にきまっていると分かっているのに、何をいまさらと自分に言いたいですね。