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そんなには褒めないよ。映画評

ミニシアター系映画レビュー*沈黙する言葉

映画タイトルの50音順メニュー作りました!

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「スザンヌ/カテル・キレヴェレ監督」フランス映画ウィーク/人が人生を振り返るに似た切なさが広がります

映画

2月13日からシネマテークで「フランス映画ウィーク」という企画ものをやっており、フランス映画祭などで上映された劇場未公開作品(かな?)を7本上映しています。

最近は、こういうあまり入りそうもない(スミマセン)作品の公開が減ってきているような気がしますが、どうなんでしょう? そうでもないのかな?

こういう企画がないと見られないのに、必然的に上映期間や時間が限定されてしまうということで、なかなか見られないというジレンマに陥るのですが、何はともかく2014年のフランス映画祭で上映された「スザンヌ」を見てきました。

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奔放に生きる女性とその家族との関係を描く作品だ。母親は既に他界し、姉妹はトラック運転手として働く父親に育てられている。ある日、学校に呼び出された父親は、スザンヌが妊娠しており、堕胎するには既に手遅れであることを知らされる。やがてスザンヌは男の子を生むが、好きな男ができると子供を父親のもとに残したまま消息を絶つ......。(フランス映画祭


映画は、冒頭のスザンヌ5,6歳のシーンを除きますと、15年位にわたるスザンヌ、マリアの姉妹と父親、そしてスザンヌの子どもシャルリー(だったかな?)の関係が描かれているのですが、特徴的なのは、さまざまな問題を引き起こすスザンヌなんですが、その問題自体のシーンが全くないということです。

たとえば、父親が、高校生のスザンヌが妊娠していると学校から知らされるシーンの次は、お腹の大きくなったスザンヌのワンカットをはさみ、息子シャルリー2,3歳のシーンであるとか、スザンヌが子どもを置いて男と何処かへ行ってしまうシーンも、妹のアパートにシャルリーがひとり残されているとか、その後スザンヌたち二人がどうしたのシーンも全くなく、スザンヌが強盗容疑で逮捕されているとか、そんな感じで事が起きるそのもののシーンは全くなく、最後まで実に坦々と進みます。

じゃあ、何を撮っているかといいますと、スザンヌ、妹のマリア、父親の三人です。

それ面白いの?と言われそうですが、これが結構見られるんですね。

たとえ映画であっても、人生の上に起きることなんてほぼ想像できるわけで、確かにそれをドラマチックに見せてくれる手法も一つの手ではありますが、結局、感動したり、いろいろ考えさせられたりすることは、その起きたことに対するそれぞれの人間の心の動きみたいなものなわけですから、いい俳優と監督のセンスさえあれば、人ひとり追っかけていくだけでも映画になるのだと思います。

スザンヌを演っているのはサラ・フォレスティエさん、何本か見ているようですが記憶に残っているのは「ラブバトル」です。父親は、「タンゴ・リブレ 君を想う」「ハートブレイカー」のフランソワ・ダミアンさん、この俳優さんはいいですね! それに妹マリアのアデル・エネルさん、姉思いの妹役で、映画的にはあまり目立たない役回りだったのですが、とても良かったです。

と、フランス映画祭のサイトを見てみましたら、アデル・エネルさん、この映画でセザール賞助演女優賞をとっているじゃないですか! 納得だと思います。「水の中のつぼみ」とか「黒いスーツを着た男」とか見ていますが、残念ながらはっきりした印象はありません。

この映画では、奔放に生きる姉に姉思いの妹という設定ですので、見始めてしばらくは、見た目の印象から、二人のキャスティングが逆じゃないのと思ったのですが、結果的にはこれでよかったのかもしれません。

サラ・フォレスティエによってスザンヌの奔放さに影が生まれ、アデル・エネルによって姉への愛情が極めて自然に感じられる映画になっています。

そして最後、ドラマチックさを排して坦々と三人を撮ることに徹してきたがゆえに、人が自分の人生を振り返るに似た切なさがスクリーンいっぱいに広がるのです。

「フランス映画ウィーク」 、もう1,2本は見られるでしょうか?