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そんなには褒めないよ。映画評

ミニシアター系映画レビュー*沈黙する言葉

映画タイトルの50音順メニュー作りました!

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「あの日の声を探して/ミシェル・アザナビシウス監督」ハジを演じたアブドゥル・カリム・ママツイエフ君の気丈さを感じさせる演技が救い

映画

出だしは結構いいんですが、中だるみしますし、このテーマでこのオチはいただけません。

冒頭、家庭用カメラで撮られた(ように見える)荒れた映像で始まります。ロシア兵とおぼしき男がやや投げやりに実況を入れながら撮っているようですが、カメラは、仲間でしょうか、2,3人のロシア兵がチェチェン住民を殺害する場面をとらえ、撮影者もそのことを何とも思っていないようです。

次のカット、映画としての映像に変わり、赤ん坊を抱いた少年が、その殺害場面を汚れたガラス越しに見つめています。少年は、恐怖だけではない、理解できないものを見つめるような得も知れぬ表情を浮かべています。赤ん坊が泣き始め、ロシア兵が銃を構えて家に入ってきます。少年は、赤ん坊をソファにおいて物陰に隠れます。何か起きそうな緊迫感が漂いますが、ロシア兵は何もせず去っていきます。

リアリティのある、映画的にはすぐれた導入だと思います。

が、しかし、その後の場所移動と時間軸のわかりにくさで集中力がそがれます。

土地名は記憶にありませんが、どこどこ(冒頭の場所)から何キロのどこどことスーパーが入り、2ヶ所場所移動します。1つ目の場所は、少年ハジ(アブドゥル・カリム・ママツイエフ)が冒頭のシーンから逃れて、やがてEU職員キャロル(ベレニス・ベジョ)と出会うことになりますので、早い段階で整理できますが、2つ目のかなり遠く離れたロシアの場所のシーンは最後まで全くどうかみ合うのか分かりません(私だけ?)。

てっきり、「あの日の声を探して」のタイトルもあり、2つ目の場所で無理矢理徴兵されるロシアの若者コーリャは、ハジが成長した10年後くらいの話で、逃げるために捨ててきた弟の泣き声が耳から離れず、弟を探すことがこの映画の主たるストーリーかと思って見ていました。

まあ、やがて、そうではないようだと分かってくるのですが、それにしても2つの物語(ハジとコーリャの物語)が最後まで全く交差することなく進み、結局、オチに使われて終わるあたりは、何だよそんなことがやりたかったのかと、こうした映画にしてはあざとさを感じました。

それに、ロシアの若者のコーリャ(マキシム・エメリヤノフ)が戦争という狂気の中で、徐々に(コーリャは一気にですが…)彼自身も狂気を帯びていくという描き方は、映画的にはよくあるパターンなんでしょうが、ステレオタイプで薄っぺらく感じます。

コーリャ以外のロシア兵たち、特に上官たちは乱暴者で知性のかけらもない描き方がされています。そもそも何が問題だと言いたいのでしょう。ロシア人たちが無法者だからこんな悲劇が起きるのだとでも言いたいのでしょうか。

まあそれはないでしょうが、悲劇のとらえ方も、加害者のとらえ方も、無力さを感じる欧米人という人物配置も、どれも新鮮みが感じられない、唯一ハジを演じたアブドゥル・カリム・ママツイエフ君の気丈さを感じさせる演技が救いの映画でした。

 1999年、チェチェンに暮らす9歳のハジは、両親を銃殺されたショックで声を失ってしまう。姉も殺されたと思い、まだ赤ん坊の弟を見知らぬ人の家の前に捨て、一人放浪するハジ。彼のような子供さえも、ロシア軍は容赦なく攻撃していた。ロシア軍から逃げ、街へたどり着いたハジは、フランスから調査に来たEU職員のキャロルに拾われる。自分の手では何も世界を変えられないと知ったキャロルは、せめて目の前の小さな命を守りたいと願い始める。
 ハジがどうしても伝えたかったこととは? 生き別れた姉弟と再び会うことができるのか──?(公式サイト