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そんなには褒めないよ。映画評

ミニシアター系映画レビュー*沈黙する言葉

映画タイトルの50音順メニュー作りました!

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「リスボンに誘われて/ビレ・アウグスト監督」物語の発端となった橋の上から飛び降りようとした赤いコートの女性の話、すっかり忘れてしまうほど引き込まれて…

映画

サスペンスでもないのに、一時たりとも目を離せない感覚を味わいました。

それだけ集中して見たということなんですが、何にそんなに引きつけられたのかと考えても、これと言ったはっきりしたものがあるわけではありません。

公式サイトにある「すべてを投げ出して、どこか遠くへ行き、別の人生を始めてみたいと思ったことはありませんか?これは、誰もが一度ならず願っては諦める"大人の夢"を実行した、ある男の物語。」なんてコピーのように、主人公のライムント・グレゴリウス(ジェレミー・アイアンズ)に感情移入して見たわけでもありませんし、謎解き的な一面に引きずり込まれたという印象でもありません。

スイスのベルンの高校で、古典文献学を教えるライムント・グレゴリウスは、ラテン語とギリシア語に精通する、知性と教養に溢れた人物だ。5年前に離婚してからは孤独な一人暮らしを送り、毎日が同じことの繰り返しだが、特に不満は無かった。だが――学校へ向かうとある嵐の朝、吊り橋から飛び降りようとした女を助け、彼女が残した1冊の本を手にした時から、すべてが変わる。
本に挟まれたリスボン行きの切符を届けようと駅へ走り、衝動的に夜行列車に飛び乗ってしまうライムント。車中で読んだ本に心を奪われた彼は、リスボンに到着すると、作者のアマデウを訪ねる。彼の妹が兄は留守だと告げるが、実は若くして亡くなっていたと知ったライムントは、彼の親友や教師を訪ね歩く。医者として関わったある事件、危険な政治活動への参加、親友を裏切るほどの情熱的な恋――アマデウの素顔と謎を解き明かしていくライムント。そしてついに、彼が本を著した本当の理由に辿り着くのだが――。(公式サイト

ビレ・アウグスト監督、カンヌでパルムドールを二度もとっているんですね。「ペレ」「愛の風景」、共に知ってはいるのですが、見ていません。これはDVDを借りなくちゃいけません。

語り口が非常にうまいです。

たとえば冒頭、ライムントは学校へ向かう途中、橋の上から飛び降りようとする女性を助けますが、特別会話を交わすわけでもなく、そのまま教室に連れて入り、女性を椅子に座らせたまま授業を始めます。常識的に考えれば実に奇妙なんですが、不思議とすんなり入ってきます。

女性は、ふっと何を思ったのか教室を出て行ってしまいます。ライムントは、女性が置いていった赤いコートを持って、授業をおっぽり出し、後を追いかけます。そして、そのままリスボンへの列車に乗ってしまうのです。

そうした何とも唐突で非日常的なことが、何の違和感もなく、極めて日常的な自然さで語られていくのです。まあ言ってみれば、その感覚にやられて引き込まれたということでしょう。

なぜライムントはそうした衝動的な行動をとったのか?

一冊の本です。100冊しか出版されなかったというその本には、ライムントの考えがそのまま書かれているといい、映画の中でも幾度か引用されます。それがまた、見ている私にも実に魅力的に響いたのです。

リスボンへの夜行列車

リスボンへの夜行列車

これが原作です。早速読もうと思います。

その後ライムントは、リスボンでその本の秘密というか、作者である革命に身を投じたアマデウの生き様を追体験することになります。その過去の物語は、革命と男女の愛憎というかなりベタなものですが、リスボンの美しい町並みや静かに高揚する語り口でただただ引き込まれるだけです。

過去の革命にまつわる悲劇的な物語という設定と相まって、エステファニア(メラニー・ロラン)の美しさも格別です。

そして、何と、物語の発端となった橋の上から飛び降りようとした赤いコートの女性の話、すっかり忘れてしまっているのです。そんなことって普通はないのですが、それさえ気にならず引き込まれた映画でした。もちろん、自殺しようとした理由は語られます。

あまり経験のない、もう一度見ようと思った映画です。