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そんなには褒めないよ。映画評

ミニシアター系映画レビュー*沈黙する言葉

映画タイトルの50音順メニュー作りました!

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「女っ気なし 遭難者/ギヨーム・ブラック監督」そこにあるのにどうしても手に取れない感覚、とも言える切なさが身にしみる

これは無茶苦茶趣味です!

「女っ気なし」が58分の中編、「遭難者」が25分の短編、どちらもフランスのピカルディ地方の田舎町オルトが舞台の話です。オルトというのはリゾート地なんでしょうか、「女っ気なし」の方は、母娘がパリからヴァカンスにやってくる話です。
AULT / google map
ここですかね? こういう映画を見ると、必ず地図上で場所を確認したくなります(笑)。

リゾート地と言っても南仏のような太陽のイメージはありませんし、観光客で賑わっているわけでもなく、かといって、寂れている印象ではありません。そこに暮らす人々の日常が感じられるとても魅力的なところです。

シルヴァン(ヴァンサン・マケーニュ)、公式サイトには青年とありますが、髪がうすくなっていることや肥満であることもあってもう少し年齢を感じますが、その彼が管理しているフラットタイプの貸別荘(?)にパトリシアとジュリエットの母娘がやってきます。

シルヴァンは本当に人が良い人柄のようで、何やかやと母娘に親切にし、パトリシアが開放的なタイプのせいもあり、次第に好意を持ち始めます。しかし、母パトリシアは、娘のジュリエットに言わせれば、相手が良い男であることを怖がってつまらない男ばかりを好きになる女性とのことで、結局シルヴァンを傷つけることになります。

こういう映画のストーリーを語ってもあまり意味がないのですが、ここで止めるわけにはいかないので、ネタバレありの続きを書きますと、娘のジュリエットは、そうしたシルヴァンに好意を持ったのか、かわいそうに思ったのか、あるいは母親への複雑な思いの結果なのか、ヴァカンスの最後の夜、シルヴァンの家を訪ね、一夜を共にします。

やはり、ストーリーなど書いてもこの映画の良さは伝わりそうもありません。じゃ、何がいいんでしょう?

まずは、シルヴァンを演じるヴァンサン・マケーニュの(映画的には)魅力的なキャラクターでしょう。人はいいのですが、何をしてもどこか危なっかしさがつきまとう味のある人物を見事に演じています。そしてパトリシア(ロール・カラミー)とジュリエット(コンスタンス・ルソー)の母娘、一見単純な陽気さに見えますが、どこか不安定な危うさを持ったパトリシア、そして何を考えているのか分からないジュリエットのクールさ、この二人も魅力的です。

そして何よりも、この三人のバランスの良さを極めてシンプルな映像におさめたギヨーム・ブラック監督のセンスの良さでしょう。三人の会話はいつまで経ってもぎこちなさの消えない静かなる緊張感を持って飽きさせませんし、三人が海で戯れる姿はほっとさせる安心感を感じさせ、時に挿入される音楽はすーと気の遠くなるような気持ち良さを持っています。そして、オルトの町の持つ魅力、ギヨーム・ブラック監督は、これを信じて撮っているようです。

そうした結果、映画でしか味わえない何とも言えない切なさが生まれます。そこにあるのにどうしても手に取れない感覚、そんな感じの切なさが…。

「遭難者」は、「女っ気なし」の2年ほど前の作品のようで、おそらくこの作品でシルヴァン=ヴァンサン・マケーニュの魅力を発見し、「女っ気なし」を撮ろうと思ったのでしょう。

リュック(ジュリアン・リュカ)はパリからの自転車ツアーの途中、三度のパンクという不運に見舞われ、たまたま通りかかったシルヴァンと知り合います。シルヴァンは「女っ気なし」とほぼ同じキャラクターで、過剰とも言える親切心、あるいは人恋しさのせいか、リュックに迷惑がられながらも近づこうとします。リュックは、そうしたシルヴァンを鬱陶しがりながらも、なぜか最後には頼ることとなり、シルヴァンの家に泊めてもらうことになります。

リュックが寝静まった頃、シルヴァンは、リュックの携帯メールを見て、親切心から、彼の恋人に迎えに来てくれとメールを打ってしまいます。恋人との間に何とも言葉では整理できない問題を抱えるリュックにとっては、迷惑を通り越して、友人なら絶交ものの行為なんですが、なぜか、それは言葉に出来ない問題であるがゆえに、不思議な結末を迎えることになります。

どちらの作品も、その不器用な男女関係には、監督自身の恋愛感が反映されているのかも知れません。