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そんなには褒めないよ。映画評

ミニシアター系映画レビュー*沈黙する言葉

映画タイトルの50音順メニュー作りました!

当サイトおすすめ映画直近の4作品

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4分間のピアニスト

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全編に渡り、ひそかに仕込まれた数々の音楽やノイズや自然音や、あるいは無音が、最後の最後、わずか4分間に炸裂する映画! その瞬間、涙が頬をつたいました。

音(楽)映画といってもいいくらい、多種多様な音が使われています。しかし、それらの多くは、それほど記憶に残るほどの主張もせず、つまり音楽であれば、ゆったり聞かせるわけでもなく、ほとんどあっという間に終わってしまう印象程度に短く、むしろノイズ系の、たとえば、ピアノを移動させるゴロゴロといった音の方がはっきり主張しています。

ある過去により音楽だけに人生を捧げてきたピアノ教師が、今は囚人として刑務所に入っている天才少女を見出し、コンテストで優勝させるというのが軸となるストーリーなんですが、途中二度ほど出てくるコンテストの場面にしても、ピアノを演奏するシーンは出てきません。やや消化不良を起こします。

といった感じで、音(楽)的には、決して心地良くはありません。そして、映像的にも切り返しが多く、ややいらつくところもあり、ストーリー展開のもうひとつの軸となっているピアノ教師と少女の過去にしても、かなり意識的に小出しにしていますので、最後まですっきりすることはありません。

紹介されている基本ストーリーからして、音楽を介した矯正物語と思わせるところもあり、ありがちな話と言われそうな危うさがあります。

といったわけで、とてもお勧めしている映画の話とは思えませんが、しかし、この映画、ある一点で、そのすべての危うさを良い方へ転換させています。

それは、すべてのことが、これ以上いったら、引かれたり、イヤミになるぞ的ギリギリのところで抑制されているということです。

映像処理や音響処理もそうですが、脚本的にもストーリー的にもそう感じます。たとえば、教師と少女のいわゆる心のふれあいにしても、どこか常に緊張感が漂い、それでいて互いに認め合っている感じは失われません。その微妙な距離感が、もうそれ以上いかないでっていうところで留められています。

いくつか要素があります。すでに書いたこともそうですが、他にも、言葉が少ない、説明的なことは避けている、看守の人物設定がうまい(うまく伏線になっている)、そして何より、教師を演じるモニカ・ブライブトロイと1200人のオーディションによって選ばれたという無名の俳優ハンナー・ヘルツシュプルングの存在感です。

モニカ・ブライブトロイという俳優さんはうまいです。冷たさの中に時折みせる笑顔が絶妙ですし、歩くカットがそこそこあったの思いますが、キャラクターが感じられるいい歩き(?)でした。

といったわけで、ギリギリのところで抑制された空気の中、ハンナー・ヘルツシュプルング演じるジェニーの発散するイライラ感が、緊張感を生み、そして、それが観る者に伝わり、圧倒的なラストシーンとなるわけです。

とにかく、これは最後の4分間のための映画です。

クリス・クラウス監督は、それを計算してやっていると思います。自らの音楽センスを信じて。